特選!ハイボールコラム
2024.3.5
ハイボールの知識と技術
頂店ハイボールのおいしさの秘密はジョッキにあり! ジョッキでおいしくハイボールを飲むコツ
1日の仕事が終わり、会社がある駅を離れ、自宅からも少し距離のあるお店で、キンキンに冷やされたハイボールを喉に流し込む。頂店ハイボールを出すお店では、我々が何気なく手に取っているジョッキにも、“頂店”への工夫が詰め込まれている。ここでは、角とジムビームのジョッキ工場で“頂店”の重要な要素であるジョッキの秘密を取材した。
頂店ジョッキができるまで
そもそもハイボールのジョッキはどのような工程を経て作られるのだろうか? ジョッキができる工程は以下の通り。
①原料となる珪砂やソーダ灰を溶かす
ガラスには珪砂やソーダ灰で作るソーダ石灰ガラスと、酸化鉛などを原料としたクリスタルガラスなどに分けられる。ハイボールに用いられるジョッキはソーダ石灰ガラスだ。まずは、集めた珪砂などの原料を高熱でドロドロに溶かす。
②溶かしたガラスを金型でプレス成型する
金型での1発プレスでジョッキの形が完成。バーナーでガラスの表面を滑らかにする“なめし”もこの工程で行う
③ジョッキを冷ます
加工後のジョッキはいまだに400~600度と高温。このジョッキを徐冷炉でゆっくりと冷ます
④検査し、ラベルを印刷する
冷めたジョッキは一つひとつ、機械と人間の目で検査する。1日で生産可能なジョッキは3万個以上とのことで大変な作業だ。検査が終わるといよいよラベルの印刷となる
インクをジョッキに高温で焼き付ける。これを再びゆっくりと冷ます
ここまで来てはじめて我々も見慣れたジョッキに…
⑤再度検査し、箱詰めする
ラベルの印刷が済んだジョッキは再度ひとつひとつ検査する
⑥検査が済んだジョッキを箱に詰めて、完成
冷やしても勢いよく乾杯しても、大丈夫なジョッキが全国のお店に出荷される
ジョッキに込められたハイボールをおいしくする工夫
上記のような工程を経て作られるジョッキだが、角ハイボールを作るジョッキと、ジムビームハイボールを作るジョッキではおいしさの工夫が違うという。
――実は角とジムビームでは、バーボンであるジムビームでハイボールを作った時の方が、泡が多く立つ特徴があります。この泡が飲みづらさにつながるので、ジムビームハイボール用のジョッキには、内面に網目模様が入っています。これを入れて表面をザラザラした形状にすることで、発泡がはみ出ないようにしてあるのです。
注がれるお酒の種類に合わせた工夫がジョッキにもされているようだ。ジョッキならではの工夫とは?
――ハイボールを入れるのによく使う器にはジョッキとタンブラーがあると思いますが、ジョッキは仲間と元気に乾杯したいときや気兼ねなく飲むときのものですよね。ですので、厚みをしっかりとって頑丈にすることや、頑丈にするのに伴って重くなるので、持ち手も持ちやすくすることが求められます。ジョッキと持ち手のバランスが悪いと持ちにくくてよくない。ですので、我々が作るジョッキはコップの部分と同じく頑丈ながら、持ち手に親指で抑えやすくなるようなカーブやデザインが入っています。また、細かいこだわりなのですが、お店の方が一度に複数持てるような形状にもなっています。
氷はジョッキにギッチリ入れるのがおいしさの基本
飲む機能としてだけではなく、持ちやすさもおいしさの一要素ととらえている訳だ。さらにお酒をおいしくする秘密もあるそうで…。
――おいしいハイボールを作るにはウィスキー1に対してソーダが4というのが基本です。角ハイボールとジムビームハイボール用のジョッキはお店の方に氷をぎっちり山盛りに詰めていただいてそこにこの比率で注ぐことで一番おいしくなるよう容量を決めています。このジョッキ容量は時代によって変化してきました。さらに、ハイボールならではの工夫として強い炭酸を維持できるようにコップの径を小さくすることで、炭酸が抜けにくいデザインになっています。この縦長の大容量というのがポイントです。角ハイボールのジョッキをこうした考えを大事にして作ったことで、非常に頑丈だしおいしい、という高評価をいただきました。それが、ジムビールのジョッキを新しく作成することにも繋がりました。
おいしいハイボールを飲むためにはおいしいジョッキも重要な要素なのだ。次にハイボールを飲むとき普段気にすることはないジョッキを少しだけ眺めてみてほしい。そこにはお酒をおいしくする工夫や、楽しく飲んでほしいという思いも詰まっている。