特選!ハイボールコラム
2024.2.9
千葉
頂店探訪
今回歩いたのは、千葉県市川[居酒屋 波波]
千葉・市川を歩いた人
- 地球の歩き方
- 部長
- 宮田崇
大好きな祖母に会うために小学校のころから総武線に乗って横浜から船橋駅へ通っていた。乗り続けて30年、人生で初めて市川に降り立ち、お店のコンセプトに感動する。市川駅で降りる理由が今日できた。
歴史と文学に刻まれる魅力的な街
JR市川駅の北口に出ると、正面の道端に「文学の散歩道」と書かれたイラストマップが立っている。何気なく見ると、しばらく目が離せなくなった。駅から北へ、江戸川に注ぐ真間(まま)川を越えて真間山弘法(ぐほう)寺まで続く大門通りは「万葉の道」と呼ばれている。川を渡った先の亀井院門前にある「真間万葉顕彰碑」は、万葉集の歌を世間に知らしめた最古の碑(いしぶみ)だという。さらにJR市川駅から歩いて20分ほどの「文学の道」には、市川ゆかりの文人に関する紹介板が順番に立ち、江戸時代のものから、北原白秋、幸田露伴、永井荷風、山本夏彦、井上ひさしと続いていく。深く文学に関わってきたこの地は、史跡の宝庫でもある。古代の貝塚から、奈良時代に建立された国分寺の跡、戦国時代の古戦場跡、そして幕末戊辰戦争の戦場など、枚挙に暇がない。市川駅の南側は高層マンションが建ち、比較的に新しい住宅街だが、駅の北側には史跡だけでなく、公園や神社仏閣も多く見どころは豊富。時間をかけてゆっくり歩いてみたくなる魅力が、この街にはありそうだ。
市川で訪れたいスポット
アイ・リンクタウン展望施設
市川駅南口に建つ高層マンションの2棟のうち、西側(駅を背にして右手)のビルの最上階(45階)に設けられた展望施設。ビルの3階から専用のエレベーターで一気に45階まで上り、展望スペースへ。大きな窓の外に素晴らしい眺望が広がる。さらに階段を上がると外の展望デッキに出ることができる。安全を考えて展望デッキもアクリルの窓で囲まれているが、東側を除き周囲をぐるっと眺めることができる。特に都心方向(西)の風景は印象的で、果てしなく建物に埋め尽くされた東京が一望のもとに見渡せる。昼の風景もいいが「日本の夜景100選」にも選ばれている夜景は特筆ものだ。これだけの景色が楽しめて無料というのも驚き。
[DATA]
住所:千葉県市川市南1-10-1
アクセス:JR市川駅から徒歩3分
時間:9:00~22:00(展望デッキは~21:00)
定休日:第1月曜(祝日の場合は翌平日)
公式サイト
里見公園
市川駅北口の乗り場から松戸方面に向かうバスで10分ほど。国府台(こうのだい)病院前のバス停から歩いて約5分で公園に到着する。園内には芝生の広場やバラ園、噴水広場がある。江戸川に近い雑木林の中には小岩にあった北原白秋の離れ「紫烟草舎」が復元されており、その近くの眺望が開けた展望台からは、スカイツリーと条件がよければ富士山が見られる。この場所にはかつて城があり、戦国時代はその城をめぐり、北条氏と安房の里見氏が戦った古戦場でもあった。
[DATA]
住所:千葉県市川市国府台3-9
アクセス:JR市川駅から京成バス松戸駅行きなどで国府台病院下車、徒歩5分
時間:自由
定休日:無
公式サイト
葛飾八幡宮
最寄りは市川駅ではなく、東隣りのJR本八幡駅、または京成八幡駅。京成線の踏切から続くイチョウ並木の先に、赤い随神門が現れる。9世紀より武神として崇敬されてきたとされる葛飾八幡宮は、源頼朝が源氏の武運を祈願し、社殿を修復させたと伝えられる由緒ある古社。境内には頼朝の馬がひづめの跡を残したという「駒どめの石」が残されている。徳川家康も社領を寄進している。本殿の横にそびえる千本公孫樹(いちょう)は国指定天然記念物。多数の幹が集まり、1本の大樹と見えるその姿は圧倒的な存在感だ。
[DATA]
住所:千葉県市川市八幡4-2-1
アクセス:京成線京成八幡駅から徒歩5分
時間:9:00~16:00
定休日:無
公式サイト
市川で訪れたのはこちらの店
居酒屋 波波
人とつながり、食とつながる幸せ人情酒場
JR市川駅北口のバスターミナルから左へ路地を入った先の2階。店内は木造りのテーブルと黒いイスで統一されている。カウンターの天井には酒のラベルが所狭しと貼られ、壁にはTシャツや世界各国の国旗などが飾られている。「それにしても、食材のストーリーがつながっていますね」。店長の大田原淑亮(よしあき)さんと話し込んでいた宮田は、感心したように頷いている。目の前に置かれているのは「佐島の蛸」。佐島は三浦半島の相模湾に面した地で、「西の明石、東の佐島」と言われるタコの名産地だ。黒潮がぶつかる相模湾でアワビやサザエなどをエサとする佐島のタコは、高級料理店でしか扱わないような食材。そんな高級品を店で出しているのは、「社長がたまたま佐島に住んで、地元の人と仲良くなり、特別な仕入れルートを確保したためです」と大田原さん。「紀州の煎り酒をつけて食べてみてください」そう言われて味わった宮田は「ほー」と唸った。
店長も開発に関わった絶品
タコはそのまま醤油で食べても最高の味わいだが、店ですすめているのが「紀州の煎り酒」をつけての食べ方だ。煎り酒とは日本酒を梅などと煮た調味料で、実は、この煎り酒の開発に大田原さんも関わっている。2023年に15周年を迎えた「波波」。大田原さんはオープン当初から料理長をしていたが、一度、別会社に入って食材などの「もったいないプロジェクト」の活動に参加し、4年前店に戻った。この活動の中、和歌山の梅干しのくずを役立てるため煎り酒の開発も行われ、大田原さんは商品の改良などに携わった。「さっぱりしていて、甘みもありますね」タコの味がより感じられると宮田。「ワサビを少し溶かしてみてください」煎り酒にワサビを落とし、タコで包み込むように食べると破顔一笑。ワサビがアクセントになりつつ、ワサビそのものも煎り酒のマイルドさとあいまって、不思議なさわやかさを口の中に広げてくれる。「白身魚や天ぷらにも、煎り酒は合いますね」大田原さんはそうつけ加えた。
ワンランク上の総合居酒屋
「白石農園フライドポテト」は、北海道の羊蹄山近くで作られた糖度の高いジャガイモを使用。雪の中でひと冬寝かせて出荷されたイモを、店で固ゆでし、冷凍脱水して揚げている。3品目の「鶏のねぎまみれ」には宮田も圧倒されている。社長の「ねぎまみれって名前の料理作らへん?」のひと言でできたメニューだという。だが、もみ込んで辛さを消したネギを数種の油とタレにあわせていて、香ばしくシャキシャキとした和わいは絶品そのもの。そのほかにも、カニみそ甲羅焼、数の子の松前漬けなど、シブいメニューが少なくない。「ジャガイモもそうですが、いい農家さんや業者さんとのつながりに恵まれています」大田原さんの話を聞いて出たのが冒頭の「食材のストーリー」という宮田の言葉だった。「食材とつながり、お客様ともつながり、気がついたら人情酒場になっていました」そう言う大田原さんはうれしそうだ。こんなに素敵でワンランク上の居酒屋が、市川にはある。
店主おススメの頂店ハイボールのアテ!
※値段はすべて税込み
〈おススメ①〉
佐島の蛸 913円
アワビやサザエ、伊勢エビなどの高級食材を食べて育ったタコは、歯ごたえがしっかりありつつも、やわらかく、甘みが強い。店ではさらに、湯をかけるなどして、表面から2㎜まで火入れをしている。ただでさえ豊富な旨みが凝縮され、とても上品な味わいとなっている。煎り酒との相性には目を見張るに違いない。
〈おススメ②〉
鶏のねぎまみれ 715円
創業から愛されている逸品。鶏も醤油味で焼かれていてインパクトのある味だが、ごま油や塩ダレを絡めた山盛りのネギも濃厚な和わい。この両者が一体となったときに生まれるパワーは想像をはるかに超えてくる。このメニューに強炭酸ハイボールが加わると、まさに至福の時間。最強のマッチングを体感することができる。
〈おススメ③〉
白石農園フライドポテト 583円
ミネラル豊富な土壌と湧水で育てられ、さらに雪の中でひと冬寝かせる「雪室低温熟成」でうまみを増したジャガイモは、濃厚でしっかりとした味わい。北海道の大地の力強さを感じさせる味わいと言ってもいい。そのままでもじゅうぶんおいしいが、塩やケチャップにつけて変化をつけて食べると止まらなくなってしまう。
宮田の取材メモ
どれもレベルが高かったです。こんなすばらしいお店が市川にあったんですね。それにしても、紀州の煎り酒は衝撃的でした。ほかにもいろいろな料理に試してみたいので、ぜひとも入手したいと思っています。
訪れた頂店
- 居酒屋 波波
頂店情報を見る