特選!ハイボールコラム
2023.11.30
ハイボールの知識と技術
“頂店”の条件3 レモンは先に軽くしぼる<シチリア>
頂店ハイボールの条件
一つ. ジョッキは冷やす
一つ. 氷は山盛り
一つ. レモンは先に軽くしぼる
一つ. おいしいサントリーのウイスキー
一つ. 最強ガス圧の超炭酸
一つ. ウイスキーとソーダの黄金比1:4
一つ. 最適温1℃の冷たさで注ぐ
レモンは特別な存在
ハイボールのジョッキの中に見え隠れするカットされたレモン。ハイボールの爽やかさを引き立てる、目立たないけれどいい仕事をしている重要な存在だ。
レモンと聞いて思い浮かべる国はイタリアだろう。なかでもシチリア島はレモンの産地として知られている。さぞシチリア産レモンが世界中に流通していると思いきや、世界のレモン(とライム)の生産量をみてみると(2021年)、実はトップはインドで、2位がメキシコ、3位が中国。その後は、トルコ、ブラジル、アルゼンチンと続く。イタリアはトップ10にも入っておらず、ようやく12位に出てくる程度だ。インドが世界一のレモン生産地といわれると、意外な感じがするが、実はレモンの原産地はヒマラヤ山脈の南側の山麓。現在のインドの北東部といわれている。
シチリアが有名な理由
西アジア一帯で栽培されていたレモンは、アラブ人の手によりその栽培エリアを西に広げ、9世紀頃にシチリアに持ち込まれたといわれている。気候的にレモンの栽培に適した土地だったために、その後もレモンの生産は続き、11世紀にノルマン人がシチリアを征服したために、レモンの存在がヨーロッパで知られるようになった。前述のようにレモンは世界中で生産されているが、主要な品種である「ユーレカ」種はシチリアが原産で、またイタリア国内で流通するレモンの7割以上がシチリア産ということもあり、多くの人に「レモン=シチリア」というイメージができあがったのかもしれない。
シチリアってどんなところ?
さて、シチリアという名前は知っているが、具体的にどんなところなのかはあまり知られていない。場所は長靴のような形のイタリア半島のつま先の先。面積は四国の1.4倍の約2万5420㎢。実は地中海で一番大きな島がこのシチリア島だ。気候は典型的な地中海性気候で夏は乾燥していて暑く、冬は穏やかだが雨が多い。柑橘類を育てるには理想的な環境。島の地形は山がちで、東の大都市カターニアの平野と海岸沿いを除き、山と丘陵が広がっている。最高峰は標高3330mのエトナ山。ヨーロッパ最大の活火山だ。地中海の真ん中にあるこの島ではギリシャ時代から現代にいたるまで、様々な文明の興亡の跡を目の当たりにできる。また巨大な火山だけでなく、美しい海が織りなす風景が至る所で眺められ、さらに新鮮な魚介類をメインに作られるシチリア料理(当然レモンが添えられる)や素朴でのんびりとした島の人々(映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の舞台はシチリアの村だ)は島の魅力。ローマやミラノとは一味も二味も違うイタリアの旅が楽しめる。
カラスミやイワシなどシーフードが多いシチリア料理にはキリっと冷えた辛口の白ワインが定番だが、爽やかなハイボールもよく合う。なかなかシチリアに行くのは難しいが、日本でシチリアの料理に出合ったら、白ワインの代わりにハイボールを試してみたい。
シチリアを旅しよう、という人には以下の読み物がおススメ
地球の歩き方 ガイドブック A13 南イタリアとシチリア 2020年〜2021年版