特選!ハイボールコラム
2024.2.9
愛媛
頂店探訪
今回歩いたのは、愛媛県松山[鶏ひげ]
愛媛・松山を歩いた人
- 地球の歩き方
- プロデューサー
- 上原康仁
中学の時に所属していた地理研究部で年間テーマがみかんだったのが初の愛媛旅行。修復工事中の道後温泉を見られたのも良かったが“蛇口からみかんジュース”を初めて目撃し、“蛇口から~”シリーズを見た数が増えたのも今回の収穫だった。
市電に乗って巡る、城と温泉と繁華街
松山は松山城が建つ標高132mの勝山の周囲に街並みが広がる。街の北東に位置する道後温泉は、日本最古の温泉のひとつとして知られている。松山の観光拠点となるのは、JR松山駅、伊予鉄道の松山市駅、繁華街の中心地である大街道(おおかいどう)、そして道後温泉だ。松山空港から道後温泉行きのバスに乗ると、JR松山駅までは約20分。その後、松山市駅、大街道、道後温泉はそれぞれ5分ほどで結ばれている。コンパクトにまとまっている街で、徒歩で移動できないことはないが、市電を利用するのが便利。ほとんどの市電が上記の4ヵ所を巡っている。松山は夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台でもあるため、かつて松山を走っていたレトロな蒸気機関車「坊ちゃん列車」が運行されることもある(現在、休止中)。のんびりした風情の温泉街を、市の中心地からこれほど短い時間で簡単に訪れることができる街も珍しいだろう。さまざまな顔を見せる松山は、市電でのんびりと巡りたい。
松山で訪れたいスポット
松山城
市電の大街道停車場からロープウェイ街を5分ほど歩いた先に、松山城ロープウェイ東雲口駅舎があり、ロープウェイ(約3分)かひとり乗りリフト(約6分)に乗ると城の下に着く。いずれも同じ場所に到着し、天守までは10分ほど歩く。歩いて山を登る道もあり30分ほどの道のりだ。豊臣秀吉の家臣、加藤喜明が1602(慶長7)年から四半世紀をかけ築城。現在の天守は1854(安政元)年に再建された。国内現存12天守のひとつ。
[DATA]
住所:愛媛県松山市大街道3-2-46(松山城総合事務所)
アクセス:伊予鉄道大街道下車、松山城ロープウェイ東雲口駅舎まで徒歩5分
時間:天守 2~7月、9~11月9:00~17:00 8月9:00~17:30 12~1月9:00~16:30
定休日:天守 12月第3水曜日
公式サイト
道後温泉本館
伊予鉄道の道後駅からアーケードの商店街を抜けた先に、時代を遠く遡ったかのような威風堂々とした木造りの建物が現れる。神々しい寺院のようにも見える3階建ての道後温泉本館は国の重要文化財に指定されている。1階には「神の湯」と「霊(たま)の湯」があり、2、3階は休憩室などになっている。温泉の歴史は3000年とも。日本最古の湯といわれる。現在、保存修理工事中だが温泉は利用可能。2024年7月に全館営業再開予定だ。
[DATA]
住所:愛媛県松山市道後湯之町5-6
アクセス:伊予鉄道道後温泉駅から徒歩5分
時間:6:00~23:00(最終入館22:30)
定休日:無休
公式サイト
道後公園
道後温泉本館から歩いて3分ほど。伊予の国の守護だった河野氏が築いた湯築城の跡地を利用した公園。直径約350mのほぼ円形の公園で広さは約8.5ha。中央は高さ約30mの丘陵地となっていて、松山市が一望できる展望台が設けられている。公園の一角にある湯築城跡では、発掘調査での出土品や武家屋敷の復元などが展示されている。公園の道後温泉本館側の入口近くには、現存する日本最古の湯釜も置かれている。桜の名所としても有名。
[DATA]
住所:愛媛県松山市道後公園
アクセス:伊予鉄道道後公園駅よりすぐ。繁華街からちょっと外れにある大きな赤い提灯が目印
時間:自由
定休日:無休
公式サイト
松山で訪れたのはこちらの店
鶏ひげ
砥部焼で味わう謙虚で実直な料理の数々
「飲み屋さん、多いですねぇ。特に焼き鳥屋が多いような気がしました」取材前日の夜に店の周辺を歩いたという上原が、焼き鳥を味わいながら店長の小田亮次さんと話している。松山随一の繁華街は、南北に約500m続く大街道のアーケード周辺。飲食店はアーケードの東側に多く、「鶏ひげ」もアーケードから東へ徒歩5分ほどのところにある。このエリアの飲食店の密集度は四国随一で、路面に面した飲食店のほか、ビルの看板にはバーやクラブの名前がずらり並ぶ。東京の銀座や札幌のすすきのの路地に似た風景だ。「鶏ひげ」は繁華街の外れにあり、大きな赤提灯がぶら下がっているのですぐにわかる。カウンターやテーブル席のほか、奥には掘りごたつの席が並ぶ。地元客のほか、周辺にビジネスホテルも多いことから出張で来たひとり客も少なくないそうだ。
旨みが凝縮された媛っこ地鶏
「うん。鶏の味がガーンときます」と鶏わさを口にした上原。もちろん、焼き鳥もおいしく味わっていたが、鶏わさの濃厚さに目を丸くしている。「媛っこ地鶏を使っています」愛媛のブランド地鶏「媛っこ地鶏」を使っていると小田さんは言った。ねぎま、手羽など「媛っこ地鶏」を使っているものはメニューにも明記されている。どの鶏をどう使うかには工夫をしていると小田さんは話す。瀬戸内海に面した立地上、魚料理はないか尋ねたときも正直な言葉が返ってきた。「中途半端に魚は出せません。松山の人は料理にうるさいから、下手なもの出したら誰も来なくなってしまいます」。だから、これまで関わってきた焼き鳥を中心にした店にしたという。謙虚な姿勢が感じられるとともに、鶏料理への自信もうかがわれた。
シンプルな砥部焼で引き立つ料理
店で使われているのは、すべて砥部焼の器だ。「やきものはわからないけど、砥部焼なら間違いない、安心できるというだけです」と小田さんは照れたように笑う。砥部焼は松山の南に位置する砥部町を中心に作られている磁器。白地に薄い藍色の絵柄が描かれているのが特徴だが、最近は色合いやデザインもバラエティー豊かになってきている。焼き鳥が盛られていたのは砥部焼の典型的なイメージの皿だったが、「鶏わさ」が盛られた器は淡いブルーだった。「やきものはわからない」とは言うものの、さりげなく種類をそろえているところに、小田さんのセンスが感じられる。決して派手ではないが、謙虚な姿勢で小田さんが作り上げる実直なメニューの数々とよく似合っているように思えた。「また来てください」店を出る上原に小田さんが笑顔で声をかけた。上原はすっかり暗くなって明かりが灯る繁華街に消えていった。
〈店主おススメの頂店ハイボールのアテ!〉
※値段はすべて税込み
〈おススメ①〉
鶏わさ 825円
媛っこ地鶏を使用した一品。媛っこ地鶏は「軍鶏」など4種類の鶏の長所を合わせた四元交配という手間のかかるかけ合わせで誕生した。脂が適度にのり、プリプリとした噛み応えとコクのある旨みが楽しめる。クセがなく、奥深い味わいは鶏わさにぴったり。ハイボールに負けない味の濃さには、やみつきになってしまうはず。
〈おススメ②〉
厚焼き玉子 605円
ボリュームたっぷりの定番人気メニュー。じんわりとしみ出してくる出汁の味わいがやさしく、思わずご飯と一緒に食べたいと考えてしまうほど。もちろん、どんなお酒とも相性はいいので、スタートの一品としても、シメとしても楽しめる。「厚焼き玉子(明太子入り)」(770円)もあり、気になるところだ。
〈おススメ③〉
焼き鳥(つくね220円、ねぎま220円、皮165円ほか)
店の自慢は、つくね。ふんわりとした食感としっかりした食べ応えがある。ねぎま、手羽、さび焼(むね肉にわさび)などでは、媛っこ地鶏が使われている。弾力がある肉質と濃厚な旨みは、ぜひ確かめたい。「おまかせ5本串」935円、「おまかせ8本串」1375円などの串盛りセットも用意されている。
上原の取材メモ
取材前日に二番町周辺をウロウロしていたのですが、松山に事前に抱いていた鯛をはじめとした魚介類推し?というイメージが、実は焼き鳥のいい店が多い激戦区、へと変化しました。お邪魔した鶏ひげさんはホテル至近で旅行者も入りやすく、デパートへの出店もされている人気店。気さくなサービスと真面目な料理が楽しめました。
訪れた頂店
- 鶏ひげ
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