特選!ハイボールコラム
2023.12.18
京都
頂店探訪
今回歩いたのは、京都府長岡京[旬菜魚くらしま]
京都・長岡京を歩いた人
- 地球の歩き方
- プロデューサー
- 梅崎愛莉
兵庫県出身。旅先の名物のお酒を飲むのが趣味。抹茶とつくものは思わず手にとるほど抹茶好きで、京都に来るたびに抹茶スイーツはマストで食べる。抹茶スイーツの本をいつか出すのが夢。
10年間日本の首都だった場所へ
電車で大阪まで約30分、京都までは約10分。長岡京はとても便利な場所に位置している。だが、この街に立ち寄ったことがある人は少ないだろう。長岡京のことは、京都の広域地図を眺めるとよくわかる。東海道本線や東海道新幹線、名神高速道路が街の近くを並行して走っている。つまり、長岡京は誰もが通っている場所なのだ。古来長岡京は交通の要衝だった。平城京と平安京の間には10年だけ都も置かれていた。現在、街を歩いてもその面影は残っていないが、旧西国街道には古い家並みもところどころで見られる。京の都に続くこの道をたくさんの人たちが行き交ったことを想像すると楽しくなってくる。そういえば、大阪府との境には「天下分け目」で知られる天王山がある。豊臣秀吉と明智光秀が戦ったのもこの近くだ。長岡京の歴史の長さ、まわりで起こった出来事などを考えると、もっと街のことを知りたくなってくる。
長岡京で訪れたいスポット
西山浄土宗総本山光明寺
JR長岡京駅からタクシーで約10分。京都屈指の紅葉の名所と呼ばれる光明寺は、住宅街を抜けた先、長岡京市西山の麓に位置している。総門から続く表参道は、通称「女人坂」や「念仏石坂」と呼ばれるゆるやかな坂道。木々の葉に覆われていて、ゆったりとした気持ちになってくる。光明寺は法然上人の弟子で、源平の戦いで名をはせた武将・熊谷次郎直実が開いたとされる。法然上人が初めて浄土宗の教えを説いた地であるとも伝えられる。
[DATA]
住所:京都府長岡京市粟生西条ノ内26-1
アクセス:阪急バス旭が丘ホーム前から徒歩2分
時間:6:00~16:00
定休日:無休
[公式サイト]
長岡天満宮
JR長岡京駅と阪急天神駅を結ぶ道は天神通りと呼ばれている。鳥居をくぐると、八条ヶ池が広がり、その中に続く堤を抜け、さらに奥へと進むと社殿の前へと到着する。この長岡の地には、菅原道真公もしばしば遊んだという。大宰府へ向かう途中、ここで名残を惜しんだとも伝えられる。八条ヶ池を含めた境内は1638(寛永15)年、桂離宮を造営した八条宮智忠親王によって築造された。八条ヶ池の周辺では四季折々の景色が楽しめる。
[DATA]
住所:京都府長岡京市天神2-15-13
アクセス:阪急京都線阪急長岡天神駅から徒歩10分
時間:自由
定休日:無休
[公式サイト]
勝竜寺城公園
JR長岡京駅の東口から南へ歩くと10分ほどで塀に囲まれた公園が現れる。城門のような入口は南側にある。勝竜寺城は足利尊氏の命により細川家が築城。1578(天正6)年には、明智光秀の娘、玉(のちのガラシャ夫人)が細川忠興に嫁ぎ、この城で2年間過ごした。父の光秀は本能寺の変のあと、山崎合戦でこの城に本陣を構えたが、豊臣秀吉に敗れ退却。ここで最後の夜を過ごし脱出したが、琵琶湖のほとりの自分の城へ戻る途中討たれた。
[DATA]
住所:京都府長岡京市勝竜寺13-1
アクセス:JR長岡京駅から徒歩10分
時間:4~10月9:00~18:00、11~3月9:00~17:00
定休日:無休
[公式サイト]
長岡京で訪れたのはこちらの店
旬菜魚くらしま
天然、無添加にこだわる食育の店
店の名物、伝助穴子が運ばれてくると、梅崎はしばらく言葉を失った。「これが穴子の棒寿司ですか?」穴子寿司と聞いて想像する料理とはまったく違うものが目の前に置かれている。「そうです、そうです」とほほ笑む店長の倉島智文さん。伝助穴子とは、通常の2、3倍はある特大サイズの穴子のことだという。兵庫や鳥取などが産地として知られるが、最近は北海道でも獲られるようになっている。まるでおにぎりのような大きさの寿司にかぶりついた梅崎は、「うーん」と唸っている。「うわっ、とてもやわらかいですね」見た目の豪快さと違って味はとても繊細だと話す。筆者もひとついただくと、思わず「穴子ではない!」と叫んでしまった。ふわふわの食感は、これまで知っている穴子とは程遠い。だが、写真で見せてくれた伝助穴子は驚異的な太さ、長さ。大きいものは1kgにもなるという。「穴子が嫌いという人でも、伝助穴子は好きとおっしゃいますよ」倉島さんの言葉に納得する。
本物の味を伝え続けて
「伝助穴子、ほかでは食べられないんですか?」「骨の処理など下ごしらえに本当に時間がかかるので、みんな扱わないんです」梅崎が尋ねると、息子の史也さんがそう話した。「父は、とにかく天然ものにこだわっているんです」倉島店長は以前居酒屋チェーンの料理長をしていたが、天然の魚を出していて地元の人たちの支持を集めていた。周囲の人の後押しもあり、4年前に自分の店をオープンした。「魚嫌いの子どもでも、うちの魚だったら好きと言ってくれるんですよ」倉島店長は食育をコンセプトにしていて、天然の食材を使い、無添加にこだわっている。名刺も、店名の前に「食育の店」と記されている。そのコンセプトは地元の人たちだけではなく、遠く愛知などから通う人もいるほど。「天然もので、この料金でやっているのでたいへんです、本当に」嘆くように言って史也さんが苦笑する。ランチはほぼ1000円以内だ。
刺身の盛り合わせも、当然……
刺身のお造りと天ぷらの盛り合わせもテーブルに運ばれてきた。こちらも当然、天然のものばかり。お客は子どもも大人も、ここで魚の本当のおいしさを知るという。「養殖ものには臭みがありますからね」倉島さんにそう言われ、果たして自分が本当の魚の味を知っているのか考え込んでしまう。「ぜんぜん違いますね」梅崎は真剣な表情で刺身の一つ一つをゆっくりと味わっている。タイやマグロの旨さはもちろんのこと、タチウオがしっとりとした歯ごたえでジューシーさを感じるほどのおいしさで驚く。まったく初めての食感だ。ここで魚を食べた人は、ほかでは食べられないと嘆いていると倉島さんは話すが、お客の言うことに同感だった。「いやー、ただただおいしくて黙って食べてしまいました」とハイボールを飲む梅崎。穴子棒寿司も刺身も天ぷらもあっという間に平らげて、大満足の表情で店を後にした。
店主おススメの頂店ハイボールのアテ!
※値段はすべて税込み
〈おススメ①〉
穴子棒寿司(大) 2500円
店の名物、伝助穴子を使った棒寿司。ご飯は約400g使っていて、大人二人でちょうどいいサイズ。ふつうの穴子とはまったく異なる味わいの棒寿司は来店したら必ず試したい逸品だ。(小)1500円も用意されている。穴子だけを味わいたい人には、煮穴子炙り(1400円)もあり、こちらとお酒を楽しむ常連さんもいる。
〈おススメ②〉
地魚五種盛 2750円
写真奥はタイ。手前は左からタチウオ、本マグロ(青森産)、カンパチ、ヒラアジ。天然の魚の味わいを知ると、ほかでは食べられなくなるというのがよくわかる。しかも値段も安い。店のリピーターが多いのも当然だろう。地魚三種盛(1800円)や天然魚薄造り三種盛(2000円)、七種盛(3800円)なども人気。
〈おススメ③〉
天婦羅盛合わせ 980円
エビと野菜の天ぷらの盛り合わせもリーズナブルな値段。穴子棒寿司や刺身盛り合わせのあとだと、少々地味にも見えてしまうが、さくさくの味わいは天然ものだけに絶品だ。揚げ物や冷菜などの単品もそろっていて、特に地元の名物となっている「にがりや」の豆腐を使った冷奴や揚げ出汁などはおすすめ。
梅崎取材メモ
桜・あじさい・紅葉が彩る京都の長岡。JR長岡京駅近くに、地元の人に愛されるお店があります。名物の穴子は、ふっくらやわらかく「今まで食べた穴子はなんだったんだ」と思うほどのおいしさでした!
訪れた頂店
- 旬菜魚 くらしま
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